

PROJECT MEMBER
-


M.O.航機営業本部
工学部 精密機械工学科
1987年卒業 -


R.T.航機事業部 第三技術部
工学部 機械工学科
1997年卒業 -


H.S.航機営業本部
国際総合科学部
国際総合科学科
2022年卒業 -


H.I.航機事業部 第三技術部
理工学研究科 機械工学専攻
2022年修了

2016年、M.O.が航機営業本部へ着任。
任されたミッションは、
航空宇宙分野で培ってきた技術を、
新たな産業分野へ展開し、
次なる成長市場を切り拓くことでした。
市場調査や顧客ヒアリングを重ねる中で、
M.O.が着目したのが、
将来的な労働人口の減少を見据え、
自動化・省力化へのニーズが
急速に高まっていた建設機械市場でした。
自動化・省力化の実現に欠かせないのが、
建設機械の位置や姿勢を高精度に計測する
IMU(慣性計測ユニット)です。
IMUは、3次元の加速度と
角速度(回転)を検出し、
物体の位置や姿勢を計測する電子デバイスで、
人工衛星やロケットの姿勢制御をはじめ、
スマートフォンの手ブレ補正やVR機器など、
私たちの身の回りのさまざまな製品に
搭載されています。
建設機械市場には、
すでに競合製品が存在していたものの、
多くの建設機械メーカーを訪問する中で、
「性能に満足できない」「コストに課題がある」
といった現場の声が多く聞こえてきました。
さらに、市場そのものもまだ成長途上にあり、
大きな可能性を秘めていると判断。
そこで2017年、
航空宇宙分野でIMU開発を担当していた
R.T.を技術リーダーとして迎え、
航空宇宙分野で培った技術を武器に、
新たな市場への挑戦が幕を開けました。




担当者VOICEM.O.

私に課された任務は、航機事業部として新しいことにチャレンジしよう、ということでした。航機はJAEの祖業であり、日本の宇宙開発の黎明期から、その発展を支えてきました。長い歴史の中で培ってきた技術や品質へのこだわりは、私たちの大きな強みです。
一方で、将来を見据え、その技術や品質へのこだわりを、さらに広い分野で活かしていきたいと考えていました。「航機の技術で、これまでとは違う社会課題を解決しよう」。それが、私たちの挑戦の出発点でした。
未知の市場に飛び込むことへの不安もありましたが、それ以上に、自分たちの技術が新しい価値を生み出せるかもしれないという期待の方が大きかったことを覚えています。

当時のJAEは、他事業部を含めても
建設機械業界との接点はほとんどなく、
人脈もゼロに近い状態からのスタートでした。
そんな中、M.O.を中心に、
建設機械メーカーへ何度も足を運び、
地道な提案活動を継続。
少しずつお客様との関係を築きながら、
現場でヒアリングした課題や
ニーズをもとに試作品を開発していきました。
実際にお客様の製品へ搭載して評価を
いただくなどして改善を重ね、また提案する。
試行錯誤を繰り返しながら、JAEは
市場参入への道を切り拓いていったのです。
そして迎えた、初めての本格的な競合コンペ。
手応えは十分にありました。
しかし、結果は不採用。
性能面では高い評価を獲得したものの、
最後に採用の可否を分けたのはコストでした。
これまで積み重ねてきた努力が届かなかった。
その悔しさは、メンバーにとって
非常に大きなものでした。
しかし、この敗北の中で、
JAEが進むべき道が見えて来る
転機が出現します。
コンペが行われた機種の他、
これから検討する機種の企画で、
JAE性能レベルでないと
成り立たない案件があり、
検討候補にして頂けることとなったのです。
具体的には、高い衝撃耐性が必要な部位への
搭載検討というもので、
「絶対に失敗が許されない品質」を
追求し続ける中で磨き上げてきた
IMUの設計思想と製造ノウハウ、
それらを建設機械向けに応用し、
砂埃や泥水、激しい衝撃が伴う
過酷な環境でも安定して機能する、
他社には真似のできない製品が
認められた瞬間でした。
誰もやったことのない領域へ踏み込み、
JAEにしかつくれない製品で勝負する――。
これこそが後にJAEの新たな強みとなり、
建設機械市場における躍進へと
つながっていくことになります。






担当者VOICER.T.

基本原理そのものは、これまで携わってきた慣性装置と共通する部分が多くありました。しかし、航空宇宙分野と異なり、市場に求められる性能や仕様を自分たちで考え、お客様へ提案していかなければならない。その点に大きな戸惑いがありましたが、今振り返ると、それこそがこのプロジェクトの大きなやりがいでもありました。
建設機械向けIMUには、市場で一般的に使われているMEMSセンサを採用するため、基本的な性能だけでは他社との差別化が難しくなります。また、自動車のような巨大市場ではないため、価格競争だけで勝ち続けることも容易ではありません。だからこそ私たちは、価格ではなく、機能や価値で差別化することを目指しました。
一つひとつ手探りで進める大変さと自分たちの手で価値あるものを作り出す楽しさは表裏一体、そんなことを改めて感じられるプロジェクトでした。

傾きや加速度を検出するIMUは、建設機械、
例えば油圧ショベルの場合、
一箇所だけでなく、
複数のパーツに取り付けられます。
アームや車体の
正確な位置・姿勢を把握するための
IMUは既にありましたが、
最も過酷な環境にさらされる
バケット先端に取り付けられるIMUは
当時はありませんでした。
土砂やコンクリートを掘削する際に発生する
強い衝撃に、
従来のIMUでは耐えられなかったのです。

検討の候補にはなったものの、
当時は、バケット部には、
どんな衝撃レベルまで耐えられれば良いのか、
お客様も含め誰にも分からない状況。
JAEは、お客様とともに
実際の使用環境を分析し、
シミュレーションと実機テストを
何度も繰り返しながら、
求められる衝撃レベルを
一つひとつ明らかにしていきました。
条件を満たすために設計を何度も見直し、
衝撃試験を重ねることで、
ついに、従来製品よりも
高い耐衝撃性能を備えたIMUを
完成させることができました。
高い耐衝撃性能とコスト競争力を両立した、
このIMUはお客様から高い評価を受け、
2019年に、見事受注を獲得。
M.O.が航機営業本部へ着任してから3年、
JAEとして建設機械市場への
確かな一歩を踏み出しました。
しかし、お客様の期待は
そこで終わりませんでした。
「JAEなら、もっとできるはず。」
高性能な製品を実現したからこそ、
バケット部でもさらに過酷な環境に晒される
機種にも搭載できる性能を要求されたのです。
その期待に応えるため、
JAE は、より高い耐衝撃性能を備えた
「堅牢型IMU」の開発を
継続していくことになりました。







「堅牢型IMU」の開発が順調に進む中、
2022年にH.I.とH.S.が入社。
営業担当のH.S.は、新入社員ながら、
すでに量産が始まっていた
IMUの出荷計画や納期調整などを担当。
必要な時期に必要な数量を
お客様へ届けるため、
日頃から密にコミュニケーションを
重ねていました。
その中で「堅牢型IMU」についても、
どの建設機械に搭載できるか、
いつから市場投入できるかなど
お客様に提案と調整を行い、
プロジェクトを前進させる役割を実行しました。
一方、入社以来、慣性装置
およびドローン向けフライトコントローラーの
設計・開発に従事していたH.I.は、
一年目の終わり頃から
「堅牢型IMU」プロジェクトに参画。
プロジェクトマネージャーの
R.T.主導で進められていた開発は、
すでにハードウェアがほぼ完成し、
量産に向けた最終段階に入っていました。
H.I.が任されたのは、
仕上げのチューニング作業です。
しかし、この最終工程こそが、H.I.にとって
最も苦労した部分だったといいます。
お客様から取得したデータをもとに
シミュレーションを行い、
最適なパラメータを導き出す。
そして、そのパラメータを実機へ組み込み、
実際に動かして検証する。
文字にするとこれだけですが、
検証するには、実機を台車に載せて
工場内を何十分も走らせ、
データを取得し、評価を行います。
わずかでもズレがあれば、
再びパラメータを調整し、
また実機で検証、評価する。
地道な作業に、朝から晩まで向き合う日も
少なくありませんでした。
こうした試行錯誤の末、2024年、
ついに「堅牢型IMU」は完成します。
過酷な建設現場でも壊れない
強靭な耐衝撃性と優れた防塵・防水性能。
航空宇宙分野で培われた技術を応用した
堅牢設計と高精度な姿勢検出により、
熟練オペレーターと同等の
施工精度を実現しました。
これは、建設機械向けIMUの常識を
覆す設計思想や製造ノウハウという、
まさにJAEだからこそ
実現できる技術がベースとなっています。






担当者VOICEH.I.

このプロジェクトを通じて、製品のアルゴリズムに直接関わる経験を得ることができました。慣性装置という一見シンプルな分野でありながら、その奥深さや複雑さを改めて認識し、理解を深めることができた点で大きく成長できたと感じています。
苦労したチューニング作業も、その結果がお客様で評価が良好であったときには、大きなやりがいと充実感を感じました。
JAEでは、低精度から高精度まで幅広い種類の慣性装置を豊富に取り揃えています。そのため、お客様の多様なニーズに柔軟に対応でき、さまざまな制御システムに組み込むことが可能です。多様な製品ラインアップを活かして、さまざまな開発案件に携われる点が新市場開拓ビジネスの大きな魅力だと感じています。


堅牢型IMUは、このお客様に限らず、
建設機械市場全体に
大きな価値をもたらす製品でした。
多くのお客様と接する中で、
その可能性を強く感じていたH.S.は、
これまで築いてきたコネクションを活かし、
さまざまな企業への
提案活動を展開していきます。
手応えを感じる一方で見えてきたのが、
市場ニーズの違いでした。
バケットの爪先のような過酷な環境では、
堅牢型IMUが大きな価値を発揮します。
ところが、市場全体としては、
アームやボディーなどに搭載する
IMUへのニーズがより大きく、
そこでは極限の耐衝撃性よりも
コストパフォーマンスが重視されます。
そこでJAEは、堅牢型IMUに加え、
より廉価な汎用型IMUの開発にも着手。
2つの製品ラインアップによって、
市場・顧客の拡大への道筋は見えてきました。
しかし、製品を持っているだけでは
市場は開けません。
新たなお客様からの受注を獲得するためには、
複数社との競合コンペを
勝ち抜く必要がありました。
業界最大手のメーカーから声がかかり、
初めてコンペを経験することになったH.S.が
大切にしていたのが、
このプロジェクトを立ち上げたM.O.の言葉です。
「お客様に、常にJAEのことだけを
考えてもらえる状態をつくりなさい」
お客様が抱える課題を誰よりも理解し、
誰よりも早く解決策を持っていく。
お客様が競合企業のことを
考える余地がないほど、
寄り添い続けることが重要だと教えられました。
H.S.は、一つひとつの打ち合わせを大切にし、
そこで得た課題やニーズは
すぐに事業部メンバーと共有しました。
そして「次はどのような提案ができるか」
「どのような価値を提供できるか」を
議論し続けました。
その姿は、開発を担当していた
H.I.にも大きな刺激を与えました。
技術者としては、完成が見えない段階で
お客様へ情報を伝えることに
葛藤もありましたが、
100点じゃなくても、
スピード感を持ってお客様の課題に応えて
一歩ずつ前進していくことの大切さと
面白さに気づくとともに、
営業が現場から次々と情報を持ち帰って
くれるからこそ、この方向で開発を進めれば、
必ずゴールにたどり着けるという
確かな道筋を描くことができました。
営業と技術が互いを信頼し、
同じ方向を向いて走る。
その一体感こそが、プロジェクトを推進させる
大きな原動力になっていました。
そして――
アームや車体に搭載できる
コストパフォーマンスに優れた汎用型IMUで、
厳しいコンペを勝ち抜き、
新たなビジネスを獲得。
先輩たちの想いを引き継いだ
若手メンバーの力により、
建設機械業界へのビジネス規模を
大きく拡大することができたのです。






担当者VOICEH.S.

コンペを経てビジネスを獲得できた際、お客様からは、JAEの技術力はもちろん、「H.S.さんの迅速な対応が決め手になった」と嬉しい言葉をいただきました。
実は私は、入社前、メーカーの営業職は、決まった製品を決まったお客様へ販売する仕事をイメージしており、自ら新しい市場を切り拓いていくとは思っていませんでした。もともと積極的に前へ出るタイプでもなかったので、最初は戸惑いもありました。それでも、M.O.さんをはじめ先輩方の姿を見て学ぶ中で、新規開拓の面白さを実感していきました。
うまくいくことばかりではありませんが、足りないと感じることは自分の成長につながり、評価をいただけた時は大きな自信になります。今は、新しい市場を切り拓いていく仕事に面白さを感じながら働けています。




堅牢型、汎用型、二つのIMUとともに
建設機械市場で存在感を増す中で、
担当者たちはさらなる未来を見据えています。
まずは、建設機械市場において、
これまで以上にお客様に寄り添い、
新たな建設機械開発のパートナーとして、
さらに進化した製品を提供していくこと。
そしてもう一つは、
働く現場での人手不足が
以前にもまして深刻な社会問題となっている今、
建設機械市場だけでなく、
耐衝撃性や高精度な姿勢検知の
ニーズがあるような市場を
開拓していくことです。
5G、AI、IoT、ロボティクスなどが進展する中で、
IMUや加速度センサなどの
「状態を検知する」センシング技術の重要性は、
今後ますます高まっていきます。
これまで想像もしなかった場所で、
新たなニーズが生まれるかもしれない。
そして、その課題を解決する技術として、
JAEのセンシング技術が活躍する領域は、
今後さらに広がっていくでしょう。
「誰もやったことがないことに挑む。」
建設機械市場で始まったこの挑戦は、
今、新たな産業の可能性を切り拓きながら、
次の未来へと走り始めています。




※所属部署及び内容は取材時のものです。


















