環境報告書2011

環境リスク低減

土壌・地下水汚染の防止

 工場跡地の再開発等や自主的な調査を契機として有害物質による土壌汚染や地下水汚染が発見されることが増えています。一度汚染させてしまうと対策には多大な費用や時間が必要となるため、重大な問題としての認識が年々高まってきています。そのような中、平成元年及び平成8年に地下水汚染対策の強化を目的とした水質汚濁防止法の改正があり、また、平成14年には土壌汚染対策法が公布される等、関係法令の整備が進められています。
 しかし、平成23年2月に取りまとめられた中央環境審議会の答申「地下水汚染の効果的な未然防止対策の在り方について」によれば、平成元年以降も地下水汚染の原因となる行為が継続していることが確認されており、汚染の原因となる有害物質及び施設を取扱う事業者に対しては、より一層の汚染防止対策の実施が求められつつあります。
 航空電子グループでは、従来から地下の貯蔵設備や配管について二重化等の汚染防止対策を行ってきましたが、2010年度からは更に、有害物質を取扱う施設及び燃料油関連施設について土壌への漏洩・浸透のリスクを評価する取組みを開始しています。評価の結果、法律の整備が進む前に設置された経年数の長い設備の一部においてリスクが大きいと判定されました。それらの設備については優先的に改修等を進めていきます。 
燃料油の地下配管をU字溝内に設置(二重化)(YAE)
地下タンクからの配管の一部が地下埋設
されていたものを地上化(JAE)
 

化学物質の管理・PRTR情報

 化学物質のリスク管理として、法定の管理責任者や資格保有者を部門や年齢を考慮して適正に配置しています。
 前年度に引き続き「化学物質の削減」を環境管理計画の実施テーマに取り上げ、化学物質による環境負荷低減の推進に力を入れました。 

化学物質の管理

 社内の事前評価制度である「安全環境審査」では、新規の化学物質や設備の導入、工事、廃棄物の排出などについて審査しています。化学物質の使用に関しては、運搬や保管、取り扱い、廃棄、その他の必要な情報を記入した自社様式の「化学物質安全管理表」を作成し審査を実施します。特に新規の化学物質についてはこの審査に合格しないと購入することもできません。新規化学物質の事前評価フロ-を以下に示します。
 2010年度の化学物質の登録状況は次表の通りです。研究開発や工程の改善のため多くの化学物質を審査登録しています。並行して不要な化学物質の見直しをしています。2010年は、登録数が減少しましたが、近年、増加していますので、引き続き不要な化学物質の削減を積極的に推進していきます。 

■日本航空電子工業・昭島事業所
  2008 2009 2010
登録数 2,217 2,249 2,183
登録廃止数 48 52 172
新規登録数 172 84 107
化学物質品種数 1,733 1,753 1,782
*登録数は用途ごとに登録するため品種数より多くなっています。

■新規化学物質事前評価フロ-

 

化学物質の削減

2010年度は、環境負荷を低減していくために、生産拠点毎に対象物質を選定し、化学物質使用量の10%削減を目指して活動してきました。2010年度の化学物質削減活動の主な事例は、以下の通りです。 
  • 洗浄方法改善による溶剤2種類の使用量削減(SAE)
        使用実績が多い化学物質の中から、製品性能の確保のため生産工程での使用量変更が困難な物を除いて削減検討した中で、洗浄用溶剤の使用量の削減に取り組み溶剤によってはおよそ半減することができました。
        今後も各種VOC(揮発性有機溶剤)の使用量削減を推進し、環境保全に努めます。
  • 洗浄液の再利用化、工程の改善による溶剤2種類の使用量削減(JAE)
        大気汚染防止法に基づく揮発性有機化合物(VOC)等に該当する溶剤2種類を対象に、使用量の前年度比10%削減を目標として次の取り組みを行いました。
    • 法規制対象物質以外への一部代替
    • 洗浄液の再利用化
    • 洗浄前に仮拭き工程追加(洗浄時間短縮、汚れ抑制・再利用化促進)
    • 部品サイズ等に合わせた小型密閉式洗浄容器への変更(使用量・蒸発抑制)等
上記の活動により、溶剤2種類の削減率は前年度比でそれぞれ36%、18%となり、目標を達成することができました。 
 

PRTR情報

 PRTR法の改正政令が2008年に公布されました。これにより対象化学物質の種類が変更され、変更後の化学物質に対しては2010年4月1日からの把握開始が定められています。変更された物質の中には、ボイラーに使用されるA重油に含有されるメチルナフタレンや金属部品の洗浄剤に含有される1-ブロモプロパンの取扱量が1トンを超えて、PRTR届出の対象となりましたので、電子届出等により報告をしました。
 下記の表に報告対象となった物質とRoHS指令の対象にもなっている物質の取扱量の推移を示します。数値は国内生産会社5社の合計値であり、★印はPRTR届出の対象となった生産拠点の数に対応しています。アンチモン及びその化合物については、難燃性のために三酸化アンチモンとしてコネクタの成形材料に含有するものも使用していますが、2009年度からは、材料の変更によりアンチモン及びその化合物が減少しています。また、RoHS指令の対象物質にもなっている六価クロムと鉛関係については、年々削減してきました。ここ数年では横ばいになっていますが、RoHS対象外の用途のお客さまのご要求に応じて対応したことによるものです。PRTR対象物質への対応として廃棄量削減も重要ですので、リサイクルを推進するとともに、傾向把握に努めていきます。

■PRTR対象物質取扱量推移    単位:トン
年度 2007 2008 2009 2010
アンチモン及びその化合物 ★★11.2 ★★19.9 ★★4.9 ★2.4
シアン ★2.7 ★2.1 ★1.8 ★2.8
六価クロム化合物 0.16 0.14 0.15 0.18
ニッケル ★7.7 ★5.8 ★6.0 ★6.4
ニッケル化合物 ★2.7 ★1.9 ★2.5 ★2.9
ふっ化水素及びその水溶性塩 ★★5.2 ★★4.6 ★3.4 ★★4.5
鉛及びその化合物 0.21 0.30 0.10 0.16
1-ブロモプロパン - - - ★★★8.9
メチルナフタレン - - - ★★★★8.6
★:PRTR報告対象(複数事業所が対象となる場合は該当数を表示)

 

VOC情報

    VOC関係物質の大気排出量について、アセトンやイソプロピルアルコ-ルを中心に年々削減してきました。削減率についてJAEでは、2009年度は、-50%と政府の目標である2010年度の-30%に対して余裕がありましたが、2010年度では、-34%となりました。その要因としては、生産の影響により、大気排出量が増加したことによります。引き続き、VOC関係物質の削減活動を継続し傾向に注意していきますが、生産の回復に伴い厳しい状況が予測されます。