環境報告書2012

特集:改正水濁法対応

 水質汚濁防止法の改正により地下水汚染の未然防止が強化されました。航空電子グループではこれまでにも多くの汚染予防対策を実施して来ており、この機会に水濁法関連の施策を過去の事例に遡って纏めてみました。これらは水濁法改正の主旨に適う内容であることを改めて確認することができましたので、以下にご紹介致します。

〔1〕環境汚染予防ガイドライン(航空電子グループ)
 航空電子グループでは、2009から2010年度にかけて環境汚染の予防を目的として関連施設を洗い出し、使用物質や設置状況などについて評価分類しました。国内分身会社全施設を共通の基準で網羅したもので、2011年度はこの結果を元に環境汚染予防ガイドラインとして纏めました。
 ここで地下埋設の配管に対して予防対策の優先度が高いと判定しており、昨年の環境報告でもご紹介しましたとおり、順次、地上配管化や二重化を進めています。
 本ガイドラインは、改正水濁法についても可能な範囲で取り込んでおり、今後、実対応を反映して内容を充実して行く予定です。

〔2〕酸/アルカリ系廃液タンク及び配管系の漏洩対策(SAE)
 SAEの化学処理工程で発生する廃酸/廃アルカリの処理に関わるもので、廃液タンク内には排ガス洗浄塔の循環水と処理設備から二重配管を経由して回収される低濃度の廃液が溜まります(図A)。 
図A 廃液タンク室関係図

1)地下廃液タンク室(図A、左上)
 廃液タンクは円筒型が2基並んだ構造となっており、それぞれが塩ビ製の角型トレイに収まっています。これらは樹脂コーティングされたコンクリートで囲まれた地下に設置されていますが、その底面及び壁面は継ぎ目が溶接された塩ビで覆われており、底面に漏洩センサーが設置された大きな塩ビ製の箱の中にトレイに収めた廃液タンクがあると考えると分かり易いといえます。

2)廃液二重配管溝(図A、右中央)
 処理設備からの廃液は外側が透明の塩ビを使用した二重配管構造で、外管内の漏洩センサーによる検知機能に加え視覚的にも確認することができます。また、この二重配管の収納溝は図のようにU字型にウエルドさせた塩ビ材が溶接されて繋がっていて、漏洩時の汚染を何重にも防止しています。 

3)タンクローリー漏洩対策用ピット(図A、中央下)

廃液タンクの廃液はタンクローリーで搬出されます。その停車位置は汲み出し時の万一の漏洩に備えてピットで囲まれ、ピットで回収した漏洩液を廃液タンクへ戻すことができます。更に、通常作業時に発生するタンクローリーの空隙部からの有害成分を含む排気の大気放出を防ぐため、排ガス洗浄塔へ繋がる回収用のフレキチューブを設けています(写真01)。

写真01 回収用フレキチューブ

〔3〕配管破損対策、漏洩検知、点検等に配慮した廃液移送配管系(JAE)
 2007年度の環境報告書にも一部の事例を掲載しましたが、これは2006年2月に発生したふっ素系廃液移送配管の破損漏洩事故対応として実施したものです。今回の水濁法の改正で、汚染の予防として点検監視が強化されたこともあり、対策事例としての価値が高いと考えます。

1)エルボー返し

配管破損原因調査から、配管の熱膨張収縮による応力の影響が大きかったことが判り、直射日光を避けた配管経路への変更や二重配管への断熱処理が施されました。更に応力緩和策として採用されたのがエルボー返しという配管形状で、直線距離が長い配管箇所には写真02のような箇所を設けており、配管材質の曲げ強度に対して充分な安全係数を確保できる設計となっています。

写真02 エルボー返し

2)漏洩監視窓
廃液移送配管は工場軒下に設置されているため、漏洩監視窓での確認は写真03のようなはしごを上って行います。確認作業の安全を確保するための枠が取り付けられています。監視窓内部は写真04のようになっており、透明塩ビ製の外管部分を通して漏洩の有無を確認することができます。
写真03 漏洩監視窓設置状況
写真04 漏洩監視窓

3)圧力試験による二重配管の漏れチェック

二重配管内には適所に漏洩センサーが設置されていますが、移送用配管の信頼性をより確実にチェックする方法として圧力試験を実施しています。写真05のように、定期的に内部加圧試験を行うことができる専用のバルブや圧力計が組み込まれています。

写真05 圧力計、バルブ関係写真

〔4〕改正水濁法の先取り(HAE)

HAEは水濁法の特定施設(めっき施設)を保有する国内主力生産工場であることから、めっき施設、ピット、トレンチ、屋内外の薬品タンク、付帯設備等、施工当初(1982年)より材質、構造等に配慮した漏洩防止対策を施しており、これらは改正水濁法の構造基準に適合しています。又、2010年度に増設した新廃水処理棟は全てを地上に配置し、より一層の対策を講じています(写真06)。 

写真06 HAE 薬液タンクの地上設置

〔5〕重油タンクの地上化及び廃止(JAE、YAE、FAE)

 YAEでは2006年の第二工場設置にあたり、地下水や土壌汚染の予防のため、暖房用重油タンク1基、10KL、を地上タンクとしました(写真07)。また2010~12年度に第一工場の空調設備をヒートポンプ式に変更し暖房用の重油地下タンク(2基、計20KL)を廃止しました。同様にJAEの第5工場新設(都市ガス化)に併せて旧工場の重油地下タンクを廃止しました(2010年度、2基、計11.9KL)。FAEに於いても、2011年度に空調設備のボイラーレス化を実施しました。この変更により5KLの地下タンク1基の使用を中止しています。
 これらは地球温暖化対策という側面で注目されがちですが、地下水汚染の予防にも役立っていることも認識したいと考えます。 

写真07 YAE 重油の地上タンク