環境報告書2012

環境リスク低減

土壌・地下水汚染の防止

 工場跡地の再開発等や自主的な調査を契機として有害物質による土壌汚染や地下水汚染が発見されることが増えています。一度汚染してしまうと対策には多大な費用や時間が必要となるため、重大な問題としての認識が年々高まってきており、関係法令の整備が進められています。
 そのような中、地下水汚染対策の強化を目的として平成元年及び平成8年に水質汚濁防止法が改正され、平成14年には土壌汚染対策法が公布されました。更に、平成23年6月に水質汚濁防止法が改正され、地下水汚染の未然防止のための規制がよりいっそう強化されており、汚染の原因となる有害物質及び施設を取扱う事業者に対する要求は年々厳しくなっています。
 航空電子グループでは、従来から地下の貯蔵設備や配管について二重化等の汚染防止対策を行ってきましたが、2010年度からは更に、有害物質を取扱う施設及び燃料油関連施設について土壌への漏洩・浸透のリスクを評価する取組みを開始しています。2011年度からは改正水質汚濁防止法への対応を中心に汚染防止対策を進めています。
※航空電子グループの取り組みは、特集:改正水濁法対応記事をご覧ください。

化学物質の管理

 社内の事前評価制度である「安全環境審査」では、新規の化学物質や設備の導入、工事、廃棄物の排出などについて審査しています。化学物質の使用に関しては、運搬や保管、取り扱い、廃棄、その他の必要な情報を記入した自社様式の「化学物質安全管理表」を作成し審査を実施します。特に新規の化学物質についてはこの審査に合格しないと購入することもできません。新規化学物質の事前評価フロ-を以下に示します。
 2011年度の化学物質の登録状況は次表の通りです。研究開発や工程の改善のため多くの化学物質が審査登録されています。昨年は登録数が増加する結果となりましたが、並行して不要となった化学物質の削減を積極的に推進していきます。

■日本航空電子工業・昭島事業所
  2009 2010 2011
登録数 2,249 2,183 2,218
登録廃止数 52 172 67
新規登録数 84 107 102
化学物質品種数 1,753 1,782 1,801
*登録数は用途ごとに登録するため品種数より多くなっています。

■新規化学物質事前評価フロ-

 化学物質の登録は、化学物質データベースにより台帳管理しています。2011年度から、JAEサイトにて、MSDSに記載の化学物質成分データの電子化を行い、2012年5月から運用を行っています。
 これにより、法規制の改正に関わる化学物質成分の検索が容易になり、今後の化学物質管理に活用して行きます。

化学物質の削減

 前年度に引き続き2011年度も、環境負荷を低減していくために、生産拠点毎に対象物質を選定し、化学物質使用量の削減を目指して活動してきました。2011年度の化学物質削減活動の主な項目は、以下の通りです。
 
・金めっき析出量削減による省金(JAE)
・洗浄方法改善による洗浄液の使用量削減(JAE、YAE)
・容器の密閉性改善、洗浄方法改善、新規購入量の削減によるVOC大気排出量の削減(JAE、YAE)
・設備導入や新規購入量の削減による薬品量の削減(HAE、YAE)
・設備導入による炭酸ガスの使用削減(SAE)
 
今後も化学物質使用量の削減を目指して活動してきます。

PRTR管理状況

 PRTR法の改正政令が2008年に公布されました。これにより対象化学物質の種類が変更され、変更後の化学物質に対しては2010年4月1日からの把握開始が定められています。変更された物質の中には、ボイラ-に使用されるA重油に含有されるメチルナフタレンや、金属部品の洗浄剤に含有される1-ブロモプロパンの取扱量が、2011年度も1トンを超えて、PRTR届出の対象となりましたので、電子届出等により報告をしました。
 下記の表に報告対象となった物質とRoHS指令の対象にもなっている物質の取扱量の推移を示します。数値は国内生産会社5社の合計値であり、★印はPRTR届出の対象となった生産拠点の数に対応しています。アンチモン及びその化合物については、難燃性のために三酸化アンチモンとしてコネクタの成形材料に含有するものも使用していますが、2009年度からは、材料の変更によりアンチモン及びその化合物が減少しています。また、RoHS指令の対象物質にもなっている六価クロムと鉛関係については、年々削減してきました。ここ数年では横ばいになっていますが、RoHS対象外の用途のお客さまのご要求に応じて対応したことによるものです。PRTR対象物質への対応として廃棄量削減も重要ですので、リサイクルを推進するとともに、傾向把握に努めていきます。

■PRTR対象物質取扱量推移    単位:トン
年度 2008 2009 2010 2011
アンチモン及びその化合物 ★★19.9 ★★4.9 ★2.4 ★2.2
シアン ★2.1 ★1.8 ★2.8 ★2.1
六価クロム化合物 0.14 0.15 0.18 0.12
ニッケル ★5.8 ★6.0 ★6.4 ★8.0
ニッケル化合物 ★1.9 ★2.5 ★2.9 ★4.0
ふっ化水素及びその水溶性塩 ★★4.6 ★3.4 ★★4.5 ★★4.4
鉛及びその化合物 0.30 0.10 0.16 0.10
1-ブロモプロパン - - ★★★8.9 ★★★8.4
メチルナフタレン - - ★★★★8.6 ★★★★9.0
★:PRTR報告対象(複数事業所が対象となる場合は該当数を表示)

VOCの削減

VOC関係物質の大気排出量について、アセトンやイソプロピルアルコ-ルを中心に年々削減してきました。削減率についてJAEでは、2010年度は、政府の目標である2010年度の-30%に対して、-34%となり、2010年度で区切りとなりましたが、2011年度以降もVOC大気排出量を監視していきます。2011年度の削減率は、-50%になりました。引き続き、VOC関係物質の削減活動を継続し傾向に注意していきますが、生産の回復に伴い厳しい状況が予測されます。